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2004年06月07日

ネットワーク家電その2

 Wiredに”Cable Snaking Into Everything”という記事が載っていた。この記事は、ブロードバンド・ホームに関する考察が書かれており、興味深いものが幾つが載っていたのでいくつか引用したいと思う。

Cable Snaking Into Everything(Wired)

 The explosion of devices and services enabled by broadband and wireless offers consumers an increasing variety of ways to manage the content and communications in their homes. Some enjoy piecing their own systems together much the way some PC users would rather build their own computers. The majority, though, don't want to know how it all works; they just want to point and click.

 ブロードバンド接続およびワイヤレス技術の進化によって、各々の家には機器やサービスが急激に溢れ、コンシューマーにとっては、さまざまな方法で自宅におけるコンテンツ管理や通信を行なうことが可能になった。コンピュータを組み立ててしまうPCユーザーがいるのと同じように、コンシューマーの中には、さまざまな機器やサービスを組み合わせて独自のシステムを構築する人もいる。ただ大多数のユーザーは、仕組みを知ることには関心がなく、ひたすら使いやすいシステムを求めている。

 消費者側としては、インテグラル化したシステムのみ用事があり、これまでのように、個々のモジュール単位の機器には興味がない最近の兆候が現れていると思う。消費者が成熟するにつれて、ニーズが高度化し、様々なモジュールをインテグラル化したシステムを求めているように思う。


Built by Scripps Networks -- home of Food Network, Home & Garden Television and the Do It Yourself Network -- and broadband-powered by Cox Communications of New Orleans, the 7,000-square-foot home boasted amenities any buyer with a fondness for technology would love -- plasma video screens in every room (and even built into the Jacuzzi), a microwave that scans bar codes for cooking instructions, a treadmill linked to the Internet, video phones and an alarm clock that runs the coffee maker from the bedroom.
 High-definition ruled, music libraries were digital and the speakers on at least one system sent tremors through the floor. Programs were multicast, recorded on one digital video recorder and watched in another room while a high-definition television program was being recorded in yet another room.

 モデル住宅は、米E・W・スクリップス社の放送部門である米スクリップス・ネットワークス---『フード・ネットワーク』『ホーム&ガーデン・テレビジョン』『ドゥー・イット・ユアセルフ・ネットワーク 』を運営する---が建設し、ニューオリンズを本拠とする米コックス・コミュニケーションズがブロードバンド接続サービスを提供した。
 家の中は、ハイテク好きの人なら誰もが欲しくなるような、さまざまな設備や機器で溢れていた。たとえば、全ての部屋にはプラズマテレビが設置され、調理法を記録したバーコードを読み取る電子レンジ、インターネットに接続されたランニングマシン、テレビ電話、寝室からコーヒーメーカーを操作できる目覚まし時計もあった。
 テレビの画面はすべて高品位で、提供される音楽ライブラリーはデジタル方式である。ある音響システムのスピーカーは、床に振動を伝えるものだった。番組はマルチキャスト方式で、1台のデジタルビデオレコーダー(DVR)に録画し、それを他の部屋で鑑賞できるだけではなく、同時に別の部屋で高品位テレビ番組を録画することも可能だった。

 あらゆる情報の流れを一元化しようとインターネットへ接続する試みが面白い。人間と機械の間をネットワークで結びつけようというコンセプトに基づいているのだろう。


 "It's all connected to our product," Dolan said. "But who's going to sell it?" Cablevision's last foray into selling consumer electronics as owner of the retail chain The Wiz failed. For Cablevision, he said, the more likely scenario might be working with manufacturers and retailers to integrate their products into a Cablevision home or to sell a service that goes along with the product.

 「みんな我が社の製品につながってはいる。しかし、誰が売るのだ?」(Dolan氏)。
ケーブルビジョン社は、小売りチェーン『ザ・ウィズ』の所有者としても家電製品販売への進出を試みていたが、これは失敗に終わった。ドーラン社長によると、ケーブルビジョン社にとってより現実味がある方法は、メーカーおよび小売業者と提携し、製品を同社のケーブルサービス契約者の家庭に組み込むか、あるいは製品とセットにしてサービスを販売することだろうという。

 どうやら、ネットワーク家電には、ロジスティックス(流通)のイノベーションも必要のようだ。今後の進展が楽しみである。

Posted by besus at 01:17 | Comments (0) | TrackBack

2004年06月06日

ネットワーク家電その1

 またもや、渡辺さんのblogからの引用である。私は、渡辺さんのファンであり、かつ、思考内容に共通点が多いので気に入っている。

ネットワーク家電は顧客の用事を片付けているか?:製品市場の現状(1)

ネットワーク家電に求められる「用事」
 ネットワーク家電は消費形態もアーキテクチャーも各プレイヤーの役割もまだ定まっていない混沌とした市場となっている。しかし、最終的に何を実現すればいいのか、消費者が求めているものは大枠からじわじわと形になっているところはある。幾つかヒアリングを交えて、映像分野を中心に高まっている物欲=現在の市場ニーズを整理してみた。
...中略...
用事を片付けるのに必要な機能は
・ネットワークからのコンテンツダウンロード。ただし、インターネットと同等のアクセス範囲が求められている
・ダウンロードしたコンテンツの統合管理。機器が分かれるのであれば機器間のコンテンツ移動
・映像系のコンテンツをまとめて視聴出来るモニタ
の三つ。

 映像分野はネットワーク家電のうち、もっとも実現化に近い分野であろう。様々なAV機器がネットワーク機能を備えてきたようだ。OSは、Linuxなどネットワーク志向のものをインプリしているようだ。用事とは、「イノベーションへの解」で出てくる用語で以下のような意味がある。

 マーケティングで狙い通りの成果をあげるためには、顧客がものを購入したり利用したりする状況を理解することが欠かせない。具体的に言えば、顧客(個人や企業)の生活にはさまざまな「用事」がしょっちゅう発生し、彼らはとにかくそれを片づけなくてはならない。顧客は用事を片づけなければならないことに気付くと、その用事を片づけるために「雇える」製品やサービスがないものかと探し回る。顧客は実際、こんな風に暮らしているのだ。彼らの思考プロセスには、まず何かを片づけなくてはという認識が生じ、次に彼らはその用事をできるだけ効果的に、手軽にそして安くこなせる物または人を雇おうとする。(中略)別の言い方をすれば、かぎとなる分析単位は、顧客ではなく状況なのだ。(p92)

 つまり、コンシューマーのウォンツ・ニーズを具現化した事象だ。ウォンツ・ニーズについては、以下の定義がなされている。

・ニーズ(Needs) - 消費者の(意識化された)必要性
・ウォンツ(Wants) - 消費者の(意識化されていない)欲求
・シーズ(Seeds) - メーカの所有している技術・材料・アイデアなど

ネットワーク家電は顧客の用事を片付けているか?:製品市場の現状(2)

 前回提示した機能要件を振り返ると、テレビ録画も含めて映像、音楽、写真などコンテンツを統合管理することは次第に出来つつあるものの、PCからHDDレコーダー側への移動が出来ていない。
…中略… 
 INとOUTを一度一箇所で束ね、HDDレコーダーorコンテンツサーバーとして機能すると同時にネットワークの複雑性も上手く取り込める機器が中心にあるのが率の高いメインシナリオだろう。
…中略…
 実現タイミングは、コンテンツのデータ形式や管理の体系がある程度標準化が先んじる必要があることを考慮すると、順当に進んで2006年以降だろうか。技術的に成熟が進み、音楽、映画産業が納得し、放送業界とも足並みが揃うとなると、まだまだ調整すべき点は多い。落ち着いてメインストリーム市場に雪崩れ込んでくるのはもっと先だろう。

 PCからHDDレコーダー側への移動は、特に需要が高いとは思えない。PCに付帯のHDDに保存する事で用が足りると思われるからである。それよりも、PCとAV機器がインテグラル化する方が可能性が高いように思われる。

Posted by besus at 00:54 | Comments (2) | TrackBack

2004年06月03日

アーキテクチャ論

 クリステンセン読書会の関係で、アーキテクチャ論にはまっている。アーキテクチャとは、一般的には建築物の意味であるが、経営学上は、ビジネス、製品、組織などのあらゆる対象の構造形式の事を意味する。アーキテクチャには、4つのカテゴリがあると言われている。

A. モジュール型         a. オープン型
B. インテグラル型         b. クロースド型

この4つが組み合わさったというのが最近の見方の主流となっている。この4つのカテゴリの間を揺れ動く事でパラダイムシフトが生じているのである。

渡辺さんがCNETで、アーキテクチャについて面白いことを書いていたので引用する。

全てはチップの上に

 ハイテク産業の全体動向を見ていると、基本力学とでも言うべき大きな流れに沿って業界全体が動いていることが良くある。大きなものだと、オープン化(アーキテクチャ、ソフトウェアに続いて、コンテンツのオープン化が進んでいる)、インターネット、最近だと検索、Webサービスや第一回のエントリで取り上げたIP化など。今回取り上げたい「全ての処理をチップの上で行ってしまおう」というチップ化の流れもその一つとなる。
…(中略)…チップセットに新しい能力を加えていく動きも今に始まったことではない。過去にもグラフィック機能の統合、マザーボードへの進出など業界再編を引き起こす動きを過去何度も起こしている。細かいトライアルを含めると多岐に渡るため主なところを。
・Centrinoブランドで提供されているWi-Fi
・ワイヤレス端末
・ホームネットワーキング、家電

 これは、モジュール型→インテグラル型への動きであると思う。CPUのプラットフォーム・リーダーとしてのインテルが水平方向の隣接領域への進出により、技術の延命を図っていると思う。プラットフォーム・リーダーの意味は以下ご参考。

Intelのプラットフォーム・リーダーへの道のり(@IT)

PC産業のチップメーカーとしてみると、インテルはクリステンセン教授のモデルに則するとローエンド破壊のプレイヤーだとまず理解出来る(教授作成の破壊者リストにももちろん加えられている)。破壊対象は大型の計算機。スーパーコンピューター、メインフレーム、もうちょっと下まで含めるとワークステーションまで。ウインドウズOSと共にPC市場を支配してきた体制を「ウィンテル同盟」などと表現されてきたが、挑戦者の側面も持っている。

パーソナルコンピューターの市場を制覇し、ローエンドのサーバー市場から企業向けに浸食を始めたIntelはUnix市場からメインフレーム市場へ、上へ上へと破壊を進めている。最終的にどこまで上がることになるのか、上がり方もチップの性能を高めていく形なのか、グリッドコンピューティングの流れが主流になり、単体チップではない、組み合わせでの効率化の方向に向かうのかはまだはっきりしていない(業界全体の力の入れようを考えるとグリッドに向かいそうではある)。どちらにせよ、今しばらく破壊が続くのは間違いない。

 正確には、ローエンド破壊だけではなくて、新市場型破壊も手がけていると解釈すべきである。新市場型破壊とは、破壊的技術により、新市場を開拓するイノベーションのことである。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野をターゲットとした64ビットCPUのIA64がこれに該当すると思われる。しかし、実際は、コンフリクトが発生し、なかなか上手く行っていないようである。詳しく書くとかなりの量になるので、ここでは割愛する。


Posted by besus at 02:50 | Comments (0) | TrackBack

2004年06月02日

ユビキタスネットワーク

 クリステンセン読書会(イノベーションへの解)のつながりで、知り合った渡辺さんが以前、私の以前のエントリ「インターネットの将来」で書いた事に関連したことを書いていたので、遅れさながらも引用する。

全てはIPに乗って

 コンピューターを接続することを目的として作られたIPネットワークが携帯、家電、車、設備監視端末、センサーなどあらゆるものを繋ごうと拡大している。住宅設備など産業的に遠いところにあるものはまだまだ夜明け前段階なものの、隣接市場となる通信業は固定から無線までIPがほぼ全て代替する可能性が出てきているなど手近なところから着実に侵食を始めている。

 これは、ユビキタスネットワークの実現の前兆が少しずつ現れているように思う。

全てはIPに乗って(2)

 ケーブル会社の持っている配給機能からコンテンツプロバイダーへのパワーシフトが起きていることがポイントなのだと。つまり、見方は完全に逆になる。AOLのケースは顧客接点と配給を押さえているからあとはコンテンツさえあれば良いという、コンテンツ側が「従」となる見方をされていた。...中略…価格設定を上手くコントロールすることで、自分達のサイトのトラフィックを主となるべく設計すればコンテンツ(=部屋と設備)を押さえている自分達が最も強いポジションを得ることが出来る。...中略…ポータルと呼ぶか、アグリゲーターと呼ぶかは別として、一箇所で情報をまとめて整理する役割を誰かが果たさなくてはならない。

 コンテンツプロバイダーは、私のエントリで言う”情報発信層”に相当するもので、こちらの方にパワーシフトするという視点では、一致すると思う。ポータル/アグリゲーターは、私のエントリで言う”情報媒介層”に相当するものでこれは、現時点は、@ITなどのIT系ポータルサイト運営者、ブロガ-、Googleなどの検索業者が相当するが、将来的には、情報発信層に集約されるように思う。

 以前のエントリの繰り返しになるようであるが、渡辺さんと殆ど考えている事が同じであったので、アップしておく。


 

Posted by besus at 23:20 | Comments (0) | TrackBack