クリステンセン読書会の関係で、アーキテクチャ論にはまっている。アーキテクチャとは、一般的には建築物の意味であるが、経営学上は、ビジネス、製品、組織などのあらゆる対象の構造形式の事を意味する。アーキテクチャには、4つのカテゴリがあると言われている。
A. モジュール型 a. オープン型
B. インテグラル型 b. クロースド型
この4つが組み合わさったというのが最近の見方の主流となっている。この4つのカテゴリの間を揺れ動く事でパラダイムシフトが生じているのである。
渡辺さんがCNETで、アーキテクチャについて面白いことを書いていたので引用する。
☆ 全てはチップの上に
ハイテク産業の全体動向を見ていると、基本力学とでも言うべき大きな流れに沿って業界全体が動いていることが良くある。大きなものだと、オープン化(アーキテクチャ、ソフトウェアに続いて、コンテンツのオープン化が進んでいる)、インターネット、最近だと検索、Webサービスや第一回のエントリで取り上げたIP化など。今回取り上げたい「全ての処理をチップの上で行ってしまおう」というチップ化の流れもその一つとなる。
…(中略)…チップセットに新しい能力を加えていく動きも今に始まったことではない。過去にもグラフィック機能の統合、マザーボードへの進出など業界再編を引き起こす動きを過去何度も起こしている。細かいトライアルを含めると多岐に渡るため主なところを。
・Centrinoブランドで提供されているWi-Fi
・ワイヤレス端末
・ホームネットワーキング、家電
これは、モジュール型→インテグラル型への動きであると思う。CPUのプラットフォーム・リーダーとしてのインテルが水平方向の隣接領域への進出により、技術の延命を図っていると思う。プラットフォーム・リーダーの意味は以下ご参考。
☆ Intelのプラットフォーム・リーダーへの道のり(@IT)
PC産業のチップメーカーとしてみると、インテルはクリステンセン教授のモデルに則するとローエンド破壊のプレイヤーだとまず理解出来る(教授作成の破壊者リストにももちろん加えられている)。破壊対象は大型の計算機。スーパーコンピューター、メインフレーム、もうちょっと下まで含めるとワークステーションまで。ウインドウズOSと共にPC市場を支配してきた体制を「ウィンテル同盟」などと表現されてきたが、挑戦者の側面も持っている。パーソナルコンピューターの市場を制覇し、ローエンドのサーバー市場から企業向けに浸食を始めたIntelはUnix市場からメインフレーム市場へ、上へ上へと破壊を進めている。最終的にどこまで上がることになるのか、上がり方もチップの性能を高めていく形なのか、グリッドコンピューティングの流れが主流になり、単体チップではない、組み合わせでの効率化の方向に向かうのかはまだはっきりしていない(業界全体の力の入れようを考えるとグリッドに向かいそうではある)。どちらにせよ、今しばらく破壊が続くのは間違いない。
正確には、ローエンド破壊だけではなくて、新市場型破壊も手がけていると解釈すべきである。新市場型破壊とは、破壊的技術により、新市場を開拓するイノベーションのことである。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野をターゲットとした64ビットCPUのIA64がこれに該当すると思われる。しかし、実際は、コンフリクトが発生し、なかなか上手く行っていないようである。詳しく書くとかなりの量になるので、ここでは割愛する。
ネットで、将来のコンピュータ・インターネットの予測について書いてあるサイトを見つけたので、以下に引用する。
☆ 2034年にはどうなっているか
ムーアの法則によれば、コンピュータの処理能力は 18 ヶ月で倍になるとされている。ということは、2034 年にコンピュータの処理能力は 100万倍になる計算だ。インターネット帯域幅に関する Nielsen の法則によれば、家庭への回線速度は毎年 50 %向上する。2034 年には 20 万倍の帯域幅になるわけだ。その年、私のコンピュータは 3 ペタヘルツの CPU、ペタバイト級のメモリ、0.5 エクサバイトのハードディスク相当の記憶装置、毎秒 0.25 テラビットのインターネット接続を持つことになる。
CPUは、実現できるかどうかは分からない。理由は、放熱の問題があるからだ。一般的に周波数が上がるとそれに伴い、放熱量が増える。破壊的技術イノベーションが起これば話は別では有るが…
また、メモリも実現できるかどうか分からない。年々、CPUが高速化しており、メモリ<=>CPUの転送速度の向上が求められているが、CPUの処理スピードについていけるバスの転送速度を実装するのは大変難しい。理由は専門的になるので割愛するが、スピードのギャップを埋めるために、キャッシュがあるわけであるが、キャッシュを意識したコンパイラの実装もなかなか難しい。メモリの容量を増やすのは簡単であるが、メモリの容量を十分に使いこなせる技術が出てくるのかどうかは懐疑的である。
ハードディスクは、実現可能だと思う。現在、ストレージ技術が急速に進んでおり、この分野が一番進んでいると思う。ただし、パーソナルユースとしては、無理でエンタープライズユースとしての実現となるであろう。
ネットワークも、実現可能であると思う。理由は、これまでに書いてきたとおりである。
将来は、クライアントは、必要最小限のものとなり、アプリなどのインテリジェント機能は、ほとんどサーバ側で行われるような気がする。そうすれば、冷却装置や、セキュリティ装置など大規模なシステムをユーザー側が持つ必要は無いからだ。
@ITにこんな記事が有った。
☆ セキュアOS研究会、あいまいだった「セキュアOS」の意味を定義
「セキュアOS」という用語は、単に「セキュリティが高いOS」の意味で使われることもあれば、特定の機能を持つ製品を指すのに使われることもある。人により解釈がまちまちで、これまで意味があいまいだった。そこで、セキュアOS製品のベンダーが中心に情報交換を行っている「セキュアOSと基盤ソフトウエアに関する研究会」は、5月11日に開いた会合で、「セキュアOS」という用語の意味の定義を試みた。まず「セキュアOS」と呼ばれるOSに共通する機能から、セキュアOSに必須の機能を抽出した。その結果、セキュアOSは「いわゆるMAC(強制アクセス制御)」と「最小特権」の二つの機能を持つOSであるというコンセンサスが得られた。
セキュアOSが一般の人に受け入れられるように概念を分かりやすく説明できないと、「絵に描いた餅」状態で終わってしまうので、定義は重要なプロセスだと思う。インプリ(実装)方法は色々有るが、コンセプトが一致しているとすんなりと顧客には受け入れられると思う。
☆ 電子政府・電子自治体におけるOS 導入のあり方について
OS の脆弱性を狙ったウイルス/ワームや不正アクセスの被害の増加等による情報セキュリティ意識への高まりに伴い、Trusted OS やSecure OS が注目されている。
Trusted OS とは、1985 年の米国国防総省指令で規定されたセキュリティ製品の評価基準TCSEC (Trusted Computer System Evaluation Criteria)及びTCSEC の補足規定集(レインボーシリーズ)において、B-Division に準拠する全てのセキュリティ機能を有しており、B-Division 以上の認定を受けたオペレーティング・システムのことである。
Secure OS とは、TCSEC B-Division に準拠するセキュリティ機能を部分的に有するオペレーティング・システムを指すことが多い。また、Trusted OS とは異なり、政府機関や第三者機関による認定を必要としない。(p25-26)
Trusted OSやSecure OSの実装のために、MiscoSoft社がガバメント・セキュリティ・プログラム(GSP)の形で条件付ソース公開を行っているのは注目すべきことと思う。
同研究会で、MicroSoft社の取締役東貴彦氏は、以下の資料を発表している。
☆ マイクロソフトのシェアードソースプログラムおよびガバメントセキュリティープログラムについて
今後は、ユビキタス・ネットワーク時代の到来を目前として、オープン・クロースドの中間的ポンジョンのようなコンバージェンス(融合)現象が増えるのではないかと思う。
例えば、以下のようなケース。
◎ ハード・ソフトの一体型サービス製品
◎ 情報家電(デジタル・ネットワーク型家電)
Windowsでしか動かない.NETがいよいよLinuxでも本格的に動くようになったようだ。.NETは、Javaと同様マルチプラットフォームで動くプラットフォームアーキテクチャだが、自社のOSのシェア保持の関係からか、MicroSoft社は、他OSへのポーティングには消極的だった。しかし、ECMAという標準化団体に.NET及びC#の標準規格案を提出しているため、他社がこれを実装する事は実質的に可能な状態になっていた。他力本願のMicroSoft社の姿勢は、擬似オープン化戦略とも言えよう。
☆ オープンソース版.NET「Mono Beta1」がリリース
Monoプロジェクトは4日、Microsoft .NET開発プラットフォームのオープンソース版「Mono Beta1」をリリースした。2001年7月に発足した同プロジェクトは、Linuxを含むUNIX系OSとWindows(XPなどNT系)を対象に、C#やC、C++、PascalやCobolといったさまざまなコンピュータ言語に対応する.NET互換環境の実現を目指している。Monoを利用することにより、デベロッパはWindowsとUnix/Linuxの両方で動作するアプリケーションの開発が可能になる。.NETはMicrosoftが開発した技術だが、Javaを意識したとも言われる新しいプログラミング言語「C#」などその仕様はオープンにされているため、Monoのようなクローンの成立する余地がある。GUIアプリケーションだけでなくWebサービスなど企業向けの開発環境となりうるため、.NET互換環境をUNIX/Linux上に実現するMonoは、Linuxを中心としたビジネスモデルを確立しようとするNovellの重要な戦略の1つと目されている。
PCWebで以下のような記事が有った。
☆ アップル、同社技術を活かした「Xgrid」による簡単なグリッド構築などを解説
Xgridは、米Apple ComputerのAdvanced Computation Group(ACG)が開発したクラスタリング技術で、既に同社のウェブサイトで公開されている。Rendezvousテクノロジが使用されており、自動的に計算ノードを探知して接続することができるなど、簡単で直感的な操作によって素早くグリッド環境を構築できることが特徴だ。
一般的に、Gridソフトウェアは、操作性が優れておらず、若干の専門知識が要るのだが、AppleのMacOSで培ったGUI技術を活かしたXgridは、操作性がかなりよさそうだ。Gridが庶民的になる時代がぐっと近づいてきたようだ。我々のような一般ユーザがGridを使うとすれば、マルチメディア分野だろう。家でAV編集を行う時にGridを駆使する時代がもうすぐやってくるに違いないと思う。低価格ながらアンリミテッドクライアントライセンスであるため、これも普及の大きな要因となると思う。今後が大変楽しみな分野である。
ネットでこんなのを見つけた。IP電話ならずP2P電話である。ルータやファイアウォールを使用している環境でも特に設定の必要がなく、無料で使えるのが一番のメリットだそうだ。こんな美味しい話をブロガ-は見逃すわけが無い。ブロガ-に流行しているとの事。
☆ Kazaaの作者が作ったP2P電話
超有名ファイル共有ソフト「Kazaa」の作者が開発した、p2p技術を利用したネット電話ソフト「Skype」が話題を集めている。日本ではなぜかブロガーに人気で、あちこちのブログでSkypeが絶賛されている。オシャレなブロガーも使っている最新流行のSkypeをぜひ導入してみよう。
☆ Skype
Adobe社製のAfter Effectという画、テレビ、ゲーム、DVD、Webといった映像コンテンツの制作ツールソフトに、にGrid機能が追加される予定だそうである。マルチメディア処理は多大なCPUパワーを要するため、Grid機能により、分散処理するというアイデアは大変良いと思う。Grid機能が、生活上の様々なケースに用いられていくような気がする。今年度ブレイクする基本技術なのかもしれない・・・
☆ Adobe、After Effectsにグリッド機能統合
米Adobe Systemsは2月2日、カナダのGridIron Softwareとのライセンス契約を発表した。契約に基づきGridIronのソフト「XLR8」を、Adobeのビデオ効果ソフト「After Effects Professional」の次期バージョンに組み込む。
After Effectsはビデオに特殊効果を施したりテキストをアニメ化する機能を備えたソフト。こうした効果をビデオ画面に次々と施すためには、多大なコンピュータの処理能力を要する場合がある。GridIronのXLR8は、ネットワーク上で使われていない処理能力を引き出して、この作業に利用できるとGridIronは説明する。
グリッドがWebサービスを包括し、いよいよ本格的に実用化されるという予感がする。以下、関連URLです。
☆ ガートナー、「グリッドとWebサービスは将来的に融合する」
☆ Webサービスからグリッドへ −OGSAは何を目指す?−【PDF】
☆ Webサービスを統合したグリッドの標準規格が決定(@IT)
☆ グリッド技術とWebサービスの融合で、商用グリッドの実現へ(IBM)
AppleがMac OS X用のグリッド構築ソフト「Xgrid」ベータ版を無償公開 した。TOP500にMac機種が登場していた辺りからそんな予感があったが、やはり出てきた。
☆ もはやテラフロップスが"当たり前"の時代に - スパコンTOP500リストが更新(3位にMac機種)
☆ Apple、Mac OS X用のグリッド構築ソフト「Xgrid」ベータ版を無償公開
米Apple Computerは6日、Mac OS X用のクラスタリングソリューション「Xgrid」を発表した。デスクトップやノート、サーバーなどネットワーク上のMac OS Xマシンを活用してグリッドコンピューティング環境を構築できるもので、同社Webサイトでベータ版ソフト「Xgrid Version 1.0(Technical Preview)」の無償ダウンロード配布を開始した。Mac OS X 10.2.8以上に対応する。
もともと、MacのCPUのアーキテクチャであるPowerPCは分散処理に強い面があったので、柔軟なシステム構成が可能なのが魅力的だ。これまで、分散処理環境構築ソフトがなかったのだが、Appleもついに本腰を入れたようだ。エンタープライズや研究分野へ売り込みをかけるストラテジーでもあるのかな?
@ITによると
年明け早々、Sun Microsystemsは、Java技術のコアと言うべきJ2SE(Java 2 Platform, Standard Edition)1.5、コード名「Tiger」のEarly Access版を公開したそうです。
今回アルファ版が公開されたJ2SE1.5では、Java言語仕様の大きな変更があります。J2SE1.5では新たに15種類の新JSR(Java Specification Requests)が取り入れられています。中でも、Java言語仕様に関しては「Java登場いらい最も大きな変更」(Sun担当者)が加えられていることです。それ以外にも、GC(ガーベジ・コレクタ)の変更、JMX(Java Management Extention)の採用など、稼働環境も含めて変更があります。
C++のtempleteに相当するGenerics機能(JSR-014)のような,長いこと待望された機能が追加されるほか,Autoboxing/Unboxingなど(JSR-201)のようにC#/.NETを意識したかのような機能追加もある。
こんなサイトがあった。Dual G5 versus Dual Opteron
元ネタは、Slashdotだ。ここのコメントにも書かれているが、まだ、64ビットに完全に対応したアプリがないので、この記事は参考程度にしかならないが、Opteronの方がGUIに強そうだ。正確なところは、まだ良く分からないが・・・
いずれにしろ、ホットな話題である事は確かなようだ・・・
Javaの次期規格J2SE1.5がもうすぐ公開されるようです。12/6現在で、Java Community Process (JCP)において、Public Review(*)中のようである。正式な規格となるまで、あと8割がたの所まで来ている。内容は以下のとおりである。
(*) 一般ユーザがドラフト仕様をレビューし、意見を出すことのできる 30 - 90 日の期間。
☆ 参考:Java 仕様開発プロセス使用時の公式手順
(1)信頼性や安全性の向上
(2)モニタリングや管理容易性(Monitoring and Manageability)
(3)スケーラビリティとパフォーマンス(Scalability and Performance)
(4)XMLとWebサービスクライアント(XML and Client Web Services)
(5)開発の容易性(Ease of Development)
言語仕様というより、包括的なプラットフォームアーキテクチャという感じになってきました。ここまで、巨大になるのは凄いと思います。Javaが如何にネットワーク指向で各種技術との親和性が高いかと言う事を物語っていると思います。
☆ Javaの未来はここにある! JCP/JSRウォッチング5
・・・続く
他にも目を引いたのがJSR 166 (Concurrency Utilities)です、これは、並列プログラミング機能が入っていて、並列計算向けのFORTRANも顔負けの至れり尽せりの機能が追加されています。
1. 並列プログラムのためのコンテナクラスの拡張
2. スレッド・プーリング(Thread Pooling)
3. アトミック操作 (java.util.concurrent.atomic)
4. ミューテックス、条件変数、リーダーライターロック (java.util.concurrent.locks)
5. セマフォ、サイクリックバリア
かなり、Low-levelな言語仕様(言語仕様と言うのかどうか疑問ですが・・・)であるというのが印象的です。
☆ Tiger (Java2 SE 1.5) で追加された並列プログラミング機能