2005年08月26日

インターネット広告のイノベーション



 奥一穂氏が、インターネット広告について以下のエントリを書いていた。


Kazuho Oku's Weblog : 「イノベーションのジレンマ」で読むインターネット広告



 コンテンツマッチ型広告技術が登場した当初、ダブルクリックの牙城は安泰のように思われた。AdSense / Overture は、従来、広告を表示するすべを持たなかった中小のウェブサイト向けのサービスであり、また、テキストのみであるという点で、バナー広告に見劣りしたからである。ダブルクリックは、ローエンドに進出するのではなく、より単価が高い、 Flash 等を利用するリッチメディア広告の拡大をもくろんでいた。


 しかし、しばらくすると、 AdSense でもバナー画像を配信できるようになり、また、上位市場である大手ウェブサイトも、これらコンテンツマッチ型の広告配信技術を採用しはじめた。


 一方、ダブルクリックが目論んだようには、リッチメディア広告市場は拡大しなかった。同社は身売りしてしまった。


 これは、「イノベーションのジレンマ」が言うところの、新市場型の破壊的技術がメインストリームをオーバーシュートしてしまった従来の支配的企業を破滅に追いやってしまう、生きた事例のように、私には感じられる。



 


 「イノベーションのジレンマ」の著者であるクリステンセン教授が言うところの破壊的技術とは、従来の技術に取って代わるようなイノベーティブで代替となる技術であって、AdSense / Overtureの技術は、これに該当しないように感じる。私は、この技術を熟知している訳ではないが、単にバナー画像に対応した(追随した)だけのように感じている。(もし、誤りであれば指摘していただければ幸いです。)それよりも、リッチメディア広告市場が拡大しなかった理由の方が重要に思う。その理由は、以下の通りではないかと思う。


(1) 当時は、ネットワークの帯域幅がブロードバンドに移行しきっておらず、ナローバンドのユーザーが依然として残っており、リッチメディア広告を表示するのに十分なネットワークインフラが整っていなかった。


  -> 外的要因の読み誤り


(2) インターネット広告に必要十分な機能を超えたテクノロジーをインプリしてしまったため、開発コストが回収額より上回ってしまった。


  -> ニーズ/シーズのアンマッチ


 以下、関連エントリ。


インターネット広告のひみつ - リッチメディア広告


リッチメディア広告をめぐる、広告主とユーザーの終わりなき戦い | WIRED VISION


Posted by besus at 2005年08月26日 00:00 | TrackBack
Comments

トラックバックありがとうございます。コンテンツマッチ型技術は、広告枠の確保、出稿元の確保、マッチングの3点においてイノベーティブだったと記憶しています。Google は、この技術を直接ダブルクリックにぶつけるかわりに、PPC という課金方法を組み合わせることで、ローエンドの市場を開拓することに成功しました。その上で、上位市場に進出したことが、ダブルクリックを急速に追い落とすことができた理由だと思います。一方、リッチメディア広告については、ご指摘の 1, 2 ともに賛成です。ただ、 1 については、現在は解決されている問題であり、にもかかわらずリッチメディア広告が普及していないということは 2 の占めるウェイトが大きいのではないでしょうか。このことから言えるのは結局、(実際に確認したわけではないですが) ダブルクリックが既存顧客の不満をベースに、より高い利益率を上げることのできる市場を開拓しようとしていたこと (上位市場を目指していたということ) 、そして、それがメインストリームをオーバーシュートしていた、ということ、だと思います。

Posted by: kazuho at 2005年08月26日 06:17

「クリステンセン教授が言うところの破壊的技術とは、従来の技術に取って代わるようなイノベーティブで代替となる技術」ではないです。むしろ、そういう常識的な考え方を否定しているところがあの本の痛快なところです。よく読みましょう。この点、奥さんの指摘はズバリ当たっています。

Posted by: foo at 2005年08月26日 10:21

kazuhoさん、fooさん、コメントをどうもありがとうございます。大変参考になります。 個人的には、破壊的技術というよりは、破壊的イノベーションと言うべきなのではと感じています。この分野に技術的に明るいわけではないので、断定できませんが、「イノベーションへの解」のP160-161には、以下のように書かれています。>>破壊的イノベーションは技術面での飛躍的前進を伴わず、既存技術を破壊的ビジネスという形にまとめたものだ。<<と有りますので、これまでの既存技術を組み合わせて新たなビジネスモデルを構築したように見えています。もし、違うようであれば、その点、ご指摘頂ければ幸いです。リッチメディア広告についてのウェイトについてはその通りだと思います。

Posted by: besus at 2005年08月27日 00:35

「破壊的技術」というのは良くないですね。「破壊的イノベーション」に修正しておきます。ありがとうございます。

Posted by: kazuho at 2005年08月30日 14:49

kazuhoさん、わざわざ修正を恐縮です。今後共々、よろしくお願いいたします。

Posted by: besus at 2005年09月06日 00:32
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